質感のつどい

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第5回公開フォーラム 基調講演・招待講演の詳細

特別講演

城 一裕 先生
九州大学芸術工学研究院/山口情報芸術センター [YCAM]
「聞こえる図と見える音」

概要:

わたしたちはこれまで、音響学とインタラクションデザインを背景に、作品制作を主体とした実践に基づく研究をしてきました。 その中では、メディア・テクノロジーに批評的に向き合い、技術の人間化の一例として、新しい技術のデモにとどまらない表現のあり方を探っています。 「聞こえる図と見える音」と題した本講演では、数字列としてのデータという観点から、 画像と音とを等価に扱うと共に、従来のコンピュータ内での信号処理に留まらず、 その外部で物理的に図や音として知覚される表現を生成しようとする幾つかの取り組みを、作品の紹介と実演を交えながら見聞きして頂きます。 音を視る・絵を聴くことを可能にするソフトウェア、あらかじめ吹き込まれた音響のないレコード、 電磁誘導により音を発する印刷物、イカの色素胞を用いたディスプレイ、というこれらの試みを通じて、 それらのメディアが指し示す別種の文化の萌芽を見出す機会にできればと考えています。

略歴:

1977年福島県生まれ。 東京藝術大学芸術情報センター[AMC]助教、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]講師を経て、 2016年3月より九州大学芸術工学研究院准教授。 山口情報芸術センター[YCAM]専門委員(非常勤)。博士(芸術工学)。専門はメディア・アート。 音響学とインタラクションデザインを背景とした現在の主なプロジェクトには、 音響再生の常識を実践を通じて再考する「Life in the Groove」、参加型の音楽の実践である「The SINE WAVE ORCHESTRA」、 ありえたかもしれない今をつくりだす「車輪の再発明」、音・文字・グラフィックの関係性を考える「phono/graph」などがある。

招待講演

浅井 健史 先生
株式会社ナリス化粧品
ふきとり時の触感が優れたふきとり化粧水の感性評価

概要:

近年、日本のモノづくり産業のキーワードとして「感性」という言葉が認知されている。 そして、実際に「感性」をモノづくりの尺度として応用した例が数多く報告されている。 そこで、我々は真にユーザーの「感性」に訴える化粧品を提供したいと考え、皮膚表面の不要な角層をふきとって取り除く 「ふきとり化粧水」への応用を試みた。本講演では、ユーザーの潜在意識に及ぶ心理構造を可視化し、 物理計測値と対応させる方法で検討した、感性評価に基づくふきとり化粧水の処方設計手法について報告する。

略歴:

2000年立命館大学理工学部化学科卒。2002年立命館大学大学院理工学研究科環境社会工学専攻修了。 同年株式会社ナリス化粧品入社。現在、研究開発部 開発課 処方開発グループ リーダーとして、スキンケア製品全般の開発業務に従事。

岡嶋 克典 先生
横浜国立大学
質感工学:今できること、これからできること

概要:

質感を工学的に取り扱うためには、対象の物理変数と知覚的な質感の関係を定量化・定式化する必要があります。 今回は対象を質感画像に限定し、画像情報(輝度、色、形状等)から得られる質感の特性や、どのようなメカニズムでヒトは質感を知覚しているのか、 そしてそれをどのように制御すればよいかについて、光沢感・鮮度感・古さ感等を中心に最近の研究成果について述べます。 また、質感制御の応用例として、クロスモーダル効果を利用した食品知覚の変調等について具体的に紹介します。 また将来展望として、質感工学の構築に重要な質感の定量化問題と、 実対象測定問題として2次元BRDF(双方向反射率分布関数)の計測方法や質感知覚の個人差等についても言及します。

略歴:

・東京工業大学物理情報工学専攻博士課程修了
・防衛大学校応用物理学教室勤務
・カナダ国立研究所客員研究員(兼任)
・東京工業大学客員助教授(兼任)
・現在、横浜国立大学大学院環境情報研究院教授
      日本視覚学会会長

神谷 之康 先生
京都大学

脳からアートを生成する

概要:

眼に入った光の情報は、点ごとの色や明るさなどに分解された後、 階層的な情報処理によって単純な特徴から徐々に複雑な特徴を表現する信号に変換されます。 その過程を経て、質感をともなう外界の認識が成立します。 アート作品ではしばしば、外界の対象として何を描いてるのかわからないものがあります。 しかし、外界の認識が成立する前の要素的特徴によって脳が刺激され、アートしての楽しさが生まれていると考えることもできるでしょう。 私の研究室では、ヒトの脳信号と画像の階層的特徴との関係をAIを用いて解析することで、脳信号から、 見ている画像や想起した視覚像をコンピュータで再現する方法を研究してきました。この方法で生成されたイメージは、 画像の再現としては正確ではないものの、物体の特徴や質感を捉えていて、奇妙な印象を生じさせます。 2017年末にYoutubeに公開した脳内イメージ再構成動画は、海外のメディアでも取り上げられ、 アーティストやデザイナー、ミュージシャンからの問い合わせが相次ぎました。ここからアーティストとのコラボレーションが始まり、 現代を代表するコンセプチュアルアーティストであるピエール・ユイグ氏とのロンドンのサーペンタイン・ギャラリーでの展示は 「新しいアートの形」との評価を受けました。この講演では、脳からイメージを生成する方法を説明した後、 この方法を用いたアート作品を紹介しながら、脳とアートの関係について議論したいと思います。

略歴:

京都大学大学院情報学研究科・教授、ATR脳情報研究所・客員室長(ATRフェロー)
奈良県生まれ。東京大学教養学部卒業。カリフォルニア工科大学でPh.D.取得後、ハーバード大学、プリンストン大学、 ATR脳情報研究所を経て、2015年から現職。2018年からATRフェロー。機械学習を用いて脳信号を解読する 「ブレイン・デコーディング」法を開発し、ヒトの脳活動パターンから視覚イメージや夢を解読することに初めて成功した。 SCIENTIFICAMERICAN誌「科学技術に貢献した50人」(2005)、塚原仲晃賞(2013年)、日本学術振興会賞(2014年)、 大阪科学賞(2015)等を受賞。サーペンタイン・ギャラリー(ロンドン)でのピエール・ユイグの展示 "UUmwelt" (2018年)のための映像を提供するなど、アーティストとのコラボレーションも進めている。

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